コラボレーションが生み出す強力なビジネス

コラボレーションとは、共に働くこと

コラボレーションとは、複数の事業体が連携して、作業を行ったり、目標を達成したりするプロセスです。コラボレーションを行う場合、チームを作り、リソースを集め、知識を共有し、共通のニーズに対する解決策を見つけます。コラボレーションの結果、1社で行う時よりも迅速に、そしてコスト削減してサービスを提供できるメリットがあります。コラボレーションによって、強力なビジネスを生み出します。

ブリ類業界の課題

ブリ類産業はいくつかの複雑な問題に直面しており、コラボレーションをすることにより、業界に大きな利益をもたらすとされています。これらの問題は、以下の5つの主要な分野に分類されます。
1)飼料、2)遺伝学、3)マーケティング、4)認証、5)治療法

最大の経費、飼料費

水産養殖の最大の経費は飼料であり、多くの企業がコスト削減のための努力をしています。飼料は、大量の資源を消費し、大部分が魚粉と魚油から作られています。1995年では、サケの飼料には、魚粉が50%以上、魚油が30%以上含まれ、残りは代替のタンパク質とデンプン*1でした。2016年になると、魚粉は約18%、魚油は約10%、そして約20%が植物油に変わり、残りの50%以上がタンパク質とデンプンの代替品になりました。

Innovation in Feed Ingredients
出典:グローバル・サーモン・イニシアティブ https://globalsalmoninitiative.org/en/our-work/sustainable-feed/

サーモンはブリ類ではない

サーモンはブリ類ではなく、異なる摂餌生活と習慣があります。重要なのは、世界のサーモン業界の50%以上が協力して飼料の解決策を見つけ、グループの利益につなげたことです。サーモン業界は、業界が直面している他の問題についても協力し続けています。
ブリ類の養殖業や生産者においても、世界規模で同様の問題に取り組めば、容易に利益を得ることができます。

コラボレーションで業界のニーズに応える

飼料、遺伝学、マーケティング、認証、治療法など、業界のあらゆるニーズは、グループコラボレーションにより効果的に管理することができます。共同研究では、遺伝子データを蓄積し、各生産者の品種改良プログラム能力を高めることができます。このような資源集約的な取り組みは、各社の貴重な知的財産を保護しつつ、コラボレーションで行うことが最も効果的です。
ブリ類の消費を促進するための全体的なマーケティング活動や、国際認証プロジェクト、病気や寄生虫に対抗するための治療法のレビューなども可能になります。
このように、グループでリソースを共有することで、より迅速かつコストを抑えて、これらの目標を達成することができます。コラボレーションは強力なビジネスを生み出すのです。

一酸化炭素

一酸化炭素を利用して新鮮さを保つ

一酸化炭素(CO)(別名:テイストレススモーク、フィルタードウッドスモーク、一酸化炭素処理)は、魚の色を保つために使用されます。通常、新鮮な魚は空気に触れると数日で色が落ち、茶色く変色してしまいます。しかし、同じ魚でも一酸化炭素処理をしたものは、日が経過しても鮮度が保たれます。 一酸化炭素処理をした3週齢の魚は、3日齢の魚と同じような見た目になります。

日本では認められていない一酸化炭素処理

日本やEUでは魚の一酸化炭素処理は認められていません。しかし、2004年7月に米国FDAは「Generally Recognized As Safe」(GRAS)という安全基準合格証を得た一酸化炭素処理を承認しました。 GRASでは、FDAは申請者の請求事項だけを確認し独自の安全性調査は行いません。FDAは、一酸化炭素を着色添加物ではなく、色安定剤とみなし、GRASを受け入れています。

ガス置換包装(MAP)

一酸化炭素は、包装の工程で空気と置き換えられます。これはMAP(ガス置換包装)と呼ばれています。これで懸念されるのは、包装された魚が誤って扱われた場合、一酸化炭素処理により鮮度が保たれるため、魚が傷んでいることを目視で判別できないことです。

出典
フードナビゲーター アメリカ, 2005/11/17, “FDAは、食用肉のための一酸化炭素の使用の取り消しを求めた
ガス置換包装 www.modifiedatmospherepackaging.com/
国立保健研究機構, 2018/02 肉や魚の包装に含まれる一酸化炭素:利点と限界
アメリカ食肉協会, 食肉包装に含まれる一酸化炭素: 俗説と事実

水産用医薬品

養殖業で使用される水産用医薬品

養殖業では病気を抑えるために水産用の医薬品が使用されています。以下のリストでは、日本の農林水産省が承認したものとアメリカ食品医薬品局(FDA)が承認したものを比較しています。WHOのCIAリスト(世界保健機関 ヒト医療において重要な抗菌性物質のリスト)には、農林水産省は承認しているものの、WHOが承認していない2種類の医薬品が記載されています。

食品医薬品局(米 FDA)

FDAが承認していない医薬品で処理した魚を輸入することはできません。農林水産省が承認している26種類の医薬品に対し、FDAが承認している医薬品はわずか9種類です。

世界保健機関

WHO CIA抗菌剤を使用すれば、食べ物を通して人間の体に影響を与え、耐性菌が体内で増殖する恐れがあります。この使用を制限することにより、本当に重要な抗菌剤との区別ができます。

有効成分MAFF FDA WHO
アルキルトリメチルアンモニウムカ
アルキルトリメチルアンモニウムカルシウムオキシテトラサイクリン
アモキシシリンアン
アンピシリンX
安息香酸ビコザマイシン
クロラミン-T
絨毛性ゴナドトロピン
塩酸ドキシサイクリン
エリスロマイシンX
フロルフェニコール
ホルマリン
ホスホマイシンカルシウム
グルタチオン
過酸化水素
ジョサマイシン
塩酸リンコマイシン
ルシウムオキシテトラサイクリン
塩化リゾチーム
オキソリン酸
オキソリン酸 (懸濁水性剤)
オキシテトラサイクリン二水和物
塩酸オキシテトラサイクリン
プラジクアンテ
エンボン酸スピラマイシン
スルファジメトキシン/オルメトプリム
スルファメラジン
スルファモノメトキシン又はそのナトリウム塩
スルフイソゾールナトリウム
チアンフェニコール
トリカインメタンスルホネート
※ 表では、魚種、疾患、投与量は考慮されていません。
※ 出典: 農林水産省, アメリカ食品医薬品局, 世界保健機関

2030年までに養殖のブリ・ハマチ生産量を増やす

2020年6月、日本政府は2030年までに養殖のブリ・ハマチの生産量を増やす計画を発表しました。2016年当初に出された計画では、香港や東南アジアへの輸出に焦点を当てていました。

新たな目標:24万トン、1,600億円

2018年には約14万トン、約158億円の養殖のブリ・ハマチが輸出されました。2030年までに生産量24万トン、 1600億円に増加させるのが新たな目標です。これは10年以内に養殖魚の生産量をほぼ倍増させ、そのうちのほとんどを輸出に充てる必要があります。これが達成できれば輸出額は約10倍にも増加します。

輸出の6割を占める3カ国

養殖魚の輸出相手国は3カ国で60%を占めています。最も多いのは香港で29.5%、中国が15.9%、次に米国が11%と並びます。その他の主要な輸出市場はタイが7.8%、ベトナムが6.1%、台湾が5.7%、韓国が5.2%となっています。

最も多く輸出されている養殖ホタテ

最も多く輸出されている養殖品はホタテで、全体の15%を占めています。その内12.3%が中国・香港に輸出されています。続いてサバが8.8%、ブリ・ハマチが5.2%となっています。ブリ・ハマチの輸出先の80%以上がアメリカ市場向けとなります。

アメリカ市場

2018年のブリ・ハマチの輸出額は158億円で、そのうち米国向けが81.3%、他国向けが18.7%でした。トンに換算すると約7,200トン、1ヶ月あたり約600トンとなります。
業界大手の港新聞によると、新型コロナウイルスの影響でブリ・ハマチの輸出量は2020年5月には73%減の216トン、輸出額は75%減の3億6,400万円となったとのことです。これが今後の市場や2030年計画にどのような影響を与えるかは不明です。

国際認証

日本に事務所がある国際認証制度としては、イギリスのロンドンに本部を置くMSC(Marine Stewardship Council)とオランダのユトレヒト州に本部を置くASC(Aquaculture Stewardship Council)の2つがあります。日本には独自の認証制度であるマリン・エコラベル・ジャパン(MEL)が東京にあります。MSCとASCはどちらも世界的に認められていて、その認証は多くの場合、バイヤーの要求事項の一つとなっています。

大規模だが実現可能な計画

政府の計画は大規模で、困難を要しますが、実現は可能です。これらの目標を達成するためには、目標に合わせ、考え方を変えていく必要があります。つまり、ノルウェー、オーストラリア、メキシコのような、大規模な市場を優先する必要があります。
現在、日本の大企業は養殖場の利権を得る上で不利な状況にあります。中小企業より大企業の方が地域社会への貢献度は高いですが、地元の養殖会社で構成される協同組合が利権をコントロールし、大企業に使用料を請求している現状であるからです。これらは、政府の 2030 年計画の成功に貢献しようとする大企業の事業拡大を事実上阻害しているのです。

大企業には経営資源がたくさんあり、地域社会を支援する潜在的な力があるので、政府の2030年計画の成功に貢献するでしょう。

国内市場に向けたものではなく、国際市場に向けた効果的なマーケティングを行う必要があります。大規模なバイヤーは、ニッチな市場を求めているのではなく、競争力のある価格、製品、サービス、配送、サポート、国際的なコンプライアンスの一貫性を求めています。

養殖魚の輸出を増加させるために

日本の養殖業を存続させるためには輸出を増やす必要があります。ブリ・ハマチは市場の約60%を占めており、これらを強化することが必要不可欠です。しかし、輸出に関する手続きは複雑であり、諸問題を避けるためには綿密な計画が必要になります。

輸出を増やす目標

とある日本の養殖会社は、北米への輸出を増やすことを目標にしていました。営業部門は新しいマーケティング資料を作り、英語のできる営業担当者を雇い、ボストンとシカゴに新しいバイヤーを見つけました。また、養殖場は注文に対応するため在庫を増やし、加工工場は大規模生産に向けて準備を整えました。
育成期間中に、大きな問題は発生しませんでしたが、毎年のように病気や感染症が発生していました。
これらの問題を解決するため、日本で承認された手順を踏み、魚の病気の問題はクリアになりました。元気な魚は切り身にされ、冷凍され、顧客の要求に応じて包装された後、コンテナでアメリカに出荷されました。

港での検査

その養殖場は日本の基準で運営されており、加工工場はHACCPが承認されているため、港での検査に関して何も問題がないと思っていました。
しかし、感染症対策に使用されていた医薬品はアメリカで承認されていなかったため、貨物は輸出許可を受けられませんでした。それにより、製品に関わる多額の投資と、バイヤーの信頼を失いました。再参入は難しいでしょう。

日本のブリ・ハマチの生産

日本では年間約14万トンのブリ、ハマチが国内消費のために養殖されています。さらに7千トンほどが主に北米に輸出されています。輸出量は徐々に増加していますが、日本の漁場を経済的に支えられるほどの増加は見込めません。

日本産のブリ・ハマチの可能性

ブリ・ハマチは生育期間が短く、様々な調理法で調理することができることもあり、大きな可能性を秘めています。また、オメガオイルを多く含み、多くの点でサーモンと比較することができます。
アメリカでは年間約40万トンのサーモンを輸入しており、魚介類を食べるアメリカ人が増えることで消費量が増えることが予想されています。残念ながら、日本のブリ・ハマチ産業は規模が小さく、競争力がありません。非効率なためオペレーションコストが高く、また国際認証を取得している養殖場も数少ないのが現実です。

課題

日本の市場は高齢化と人口減少により縮小傾向にあります。また、魚よりも牛肉を好む若者の嗜好の変化に直面しています。日本のブリ・ハマチ産業の将来は輸出することにあり、最大の輸出市場は北米です。
他国のブリ・ハマチ養魚場はすでに国際認証を取得し、生産規模を増やし、アメリカの輸入法に従っています。日本の養殖場も海外の要件に準拠しそれに適応する、あるいは産業を存続させるために日本の要件と互換性を持たせるような仕組みが必要です。